2019/12/9(更新日: 2019/12/9)
井上尚弥選手のバンタム級転向後、3試合(VSジェイミー・マクドネル、VSファン・カルロス・パヤノ、VSエマヌエル・ロドリゲス)は、いずれの試合も早期KO決着に終わりました。
順に並べると、
(VSジェイミー・マクドネル)1R 1分54秒 TKO
井上尚弥のKOラウンドで何が起こっているのか!?パンチデータから徹底分析➀【VSマクドネル】
(VSファン・カルロス・パヤノ)1R 1分10秒 TKO
井上尚弥のKOラウンドで何が起こっているのか!?パンチデータから徹底分析➀【VSパヤノ】
(VSエマヌエル・ロドリゲス)2R 1分19秒 TKO
なんと3試合合計4ラウンド(合計時間7分23秒)しか戦っていません。
そこで今回はバンタム級転向後、3試合で圧倒的な数字を残した井上尚弥選手のKOラウンドをピックアップして(VSロドリゲスのみ全ラウンド)、パンチ数、種類から分析していきます。
今回は、バンタム級3戦目にしてWBSSバンタム級準決勝戦VSエマヌエル・ロドリゲスです。
VSロドリゲス 井上尚弥のパンチデータ

まずは1R目です。
ジャブの比率が高く、冷静に試合をスタートさせているのが分かります。
前回、前々回の試合と1R秒殺KOだったため、初回から攻めてしまいがちですが、慎重な立ち上がりでした。
また、左フックの割合が33%と2番目に高い数字を残しています。
予想を反して、ロドリゲスが前に出てきたため、距離が近くなったのが要因なのではと思います。ちなみにファーストパンチもこの左フックでした。
続いて、1Rの各パンチヒット率です。

1Rのパンチ数は55発その内クリーンヒットは20発、ヒット率は36%になります。
続いて、各パンチを見ていきましょう。
ジャブは、合計28発(ボディ3発)クリーンヒット7発(ボディ1発)でヒット率25%と上々の出来です。
続いて2番目に多かったパンチである左フックです。
合計18発クリーンヒット9発でヒット率はなんと50%です。
ただし、軽く打ったパンチもあったため、ダメージを激しく与えたという感じはありませんでした。しかし、2Rに向けて左フックのタイミングを掴んでいったことは間違いないでしょう。
1Rを総括すると、ロドリゲスを観察するラウンドになったのではと思います。
ロドリゲスがこれほど前に出てくるとは思いませんでしたが、井上選手は冷静にロドリゲスの距離及びタイミングを測っていたと思います。
また、このラウンドは「ロドリゲスに取られたのでは??」という声もありましたが、井上選手のラウンドだったと思います。
確かにロープを背負うシーンがありましたが、下がらされた訳でも不利な状況に追いやられた訳でもないので、全く問題ありません。クリーンヒットの数も上回っています。
実際にジャッジは3者とも井上選手の10-9でした。
続いてKOの生まれた2R目です。
VSロドリゲス 井上尚弥のパンチデータ2R目

パンチの比率でもっとも高いのが左フックです。
1Rでタイミングを掴んだのでしょう。
最初のダウンもこのパンチから生まれています。
2R開始30秒、距離が詰まった所、左手で相手の右ガードをはねのけながら、右ボディ→左フック。
見事な仕掛け+コンビネーションでした。
またボディショットの比率が高く全体の23%を占めています。
2番目のダウンは、右ボディからの左ボディショット、3度目のダウンもワンツー→左ボディで奪っています。
最初のダウンを奪った後、顔に行かず、冷静にボディを攻めるところはさすが井上選手でした。
特にボディショットで2度目のダウンを喫したロドリゲス選手の苦痛に歪む表情は、井上選手の凄まじいパワーを象徴するシーンとなりました。
続いて、2Rの各パンチヒット率です。

2Rのパンチ数は22発その内クリーンヒットは11発、ヒット率は50%になります。
ヒット率は50%と非常に高く、またボディへの打ち分けも出来ています。
特に今回は良いタイミングでボディショットが放てていたと思います。
最初のダウンも右ボディからのコンビネーションで奪い、2、3番目のダウンは直接ボディショットで奪っています。
井上尚弥選手の代名詞とも言える強烈なボディショットですが、VSロドリゲスでもその力を発揮しました。
最後に全ラウンドの総括です。
VSロドリゲス 井上尚弥のパンチデータ全ラウンド

全ラウンドのパンチ比率を見ても、左フックの多さが目立ちました。
前述した通り、ロドリゲスが前に出てきて、接近戦が多くなったのが要因でしょう。
唯一気になったのは、バランスを崩すほど強振した左フックが何度かあったことです。
打ち終わりを貰わないかヒヤヒヤしました。
予測能力、ディフェンス能力の高い井上選手だから、貰わないタイミングで強振しているとは思うのですが。。
もし、そうでなければ、打ち終わりのディフェンスに改善の必要を感じます。

全2Rを通してのパンチ数は77発その内クリーンヒットは31発、ヒット率は40%になります。
手数、ヒット率ともに非常に高いスタッツを残しました。
戦前は「ついに井上尚弥が苦戦するのでは??」という声もありましたが、全くの杞憂に終わり、井上選手の完勝となりました。
海外2戦目(イギリス・グラススゴー)でこの結果は、非常に価値が高いです。
今後、海外での試合が多くなる井上選手にとっても、コンディション作りを含め良い経験になったと思います。
以上、井上尚弥選手のバンタム級転向後、3試合の試合分析となりました。
次回は、3試合全てのデータをまとめて分析していきます。
最後までありがとうございました。
それでは。